1400年の歴史を刻んできた、日本の伝統的屋根材「瓦」について
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こんにちは!POPCONEのまあこです!
日本の歴史的な建物にも必ず使われている瓦。日本人にとって瓦屋根は馴染みが深く、これまでの歴史の中で瓦屋根は日本の文化ともいえる地位を築いてきました。また、その重厚感や耐久性などは他の屋根材を圧倒し、今でも使用され続けています。

今回は日本人と共に長い歴史を歩んできた瓦についてご紹介していきます!
目次
瓦の歴史
瓦の起源ははっきりとしていなく諸説あるようですが、中国の周(紀元前900年~800年頃)の時代には屋根瓦として使われていたことがわかっているようです。
日本には588年頃に朝鮮半島から麻奈文奴(まなふぬ)、陽貴文(やんぎふん)、陵貴文(りゃんぎふん)、昔麻帝弥(きまてや)という4名の瓦作りの技術者によって伝えられたとされています。そしてこの4人が我が国最初の仏寺である飛鳥寺(別名:法興寺もしくは元興寺)の造瓦を担当したとされています。

この飛鳥寺は1400年以上経過した現在でも創建当時の瓦を拝見することができます。
瓦とは?
瓦とは屋根葺きに用いられる代表的な建材です。
世界百科事典によると「瓦」とは、おもに粘土製の小形板のことを言います。屋根瓦、床敷用の甎(せん)、甓(へき)およびタイルなど、いわゆる敷瓦をも含み広範囲にわたっていますが、近年では屋根瓦を指す場合がほとんどです。
瓦の種類

住宅を風雨、日光、太陽熱から守るといった重要な役割を果たしている瓦。家の寿命は屋根と基礎で決まるとも言われています。そんな大切な屋根に使われる瓦の種類と特徴についてご紹介していきます!
瓦の種類は大きく分けて粘土系とセメント系の2種類に分類されます。さらに、粘土系の瓦は釉薬瓦と無釉瓦に分けられます。
- 粘土瓦(陶器瓦・いぶし瓦)
- セメント瓦
陶器瓦(釉薬瓦)
陶器瓦を釉薬瓦ともいい、粘土瓦の一種です。粘土を瓦の形にかたどったものの上に釉薬をかけて、窯の中に入れて高温で焼き上げた瓦のことを指します。瓦表面の釉薬がガラス質になっているため水が浸透せず、長い年月を経ても美しい状態を保ち、メンテナンスの必要がありません。
形はさまざまで、J形(和形)、F形(平板)、S形などがあり家の形状に合わせて使い分けられます。また、釉薬を替えることにより色やツヤの出し方を変えることも出来ます。
いぶし瓦(無釉瓦)
陶器瓦と同様粘土瓦の一種ですが、陶器瓦と焼成方法(焼き方)が違い、粘土を瓦の形にかたどったあと何もかけずに窯の中に入れて焼き、焼き上げた後に燻化させ瓦の表面に炭素膜を形成させることで瓦全体が渋い銀色をした瓦が出来上がります。陶器瓦と同様、形はさまざまでJ形、F形、S形などがあり特にJ形が多く使われています。
釉薬を塗らないいぶし瓦(無釉瓦)は、表面の炭素膜が年月の経過とともに剥がれ落ち、変色していくなど陶器瓦(釉薬瓦)に比べると耐久性に劣ります。
セメント瓦
厚型スレート・コンクリート瓦とも言われ、その名の通りセメントと砂を主原料としたもので、表面処理(塗装)をして使われます。以前は和形の生産が多かったのですが、現在は洋形(F形やS形など)が増えています。焼き物ではないセメント瓦の利点は、成形の精度が高いことです。
また、塗料で着色するので家の形や壁の色に合わせてどんな色にもすることができます。ただ、経年により変色・脱色がおき、定期的なメンテナンス(塗装)が必要となります。
粘土瓦の優位性と劣位性

1400年以上の間、日本の建築物を守ってきた屋根材「粘土瓦」の優位性と劣位性についてご紹介します!
優位性
- 通気性
- 遮音性
- 断熱性
- 耐久性
- 防火性
劣位性
- 重量
瓦の耐久性とメンテナンスについて
粘土瓦は高温で焼き締められ、表面をガラス質の釉薬で覆われている陶器瓦は長期に渡り経年変化・劣化による色落ちがほとんどありません。よって、他の塗装されている屋根材と違い塗り替えのメンテナンスは必要ありません。また、他の屋根材の耐用年数が10~20年に対し、瓦は耐久性に優れています。参考までに瓦の耐用年数は以下の通りです。
屋根材 | 耐用年数(寿命) | メンテナンス時期 |
---|---|---|
陶器瓦(釉薬瓦) | 60年以上 | 半永久的にメンテナンス不要 (下地材の交換は必要となります) |
いぶし瓦(無釉瓦) | 30~50年 | 30~50年で交換 |
セメント瓦 | 20~30年 | 10~15年ごとに塗装が必要 |

瓦の耐用年数は屋根材として最高レベルと言えます!
瓦屋根って他の屋根材と比べて高いの?
新築時のイニシャルコストでは、粘土瓦の屋根価格は他の屋根材に比べると高くなってしまいます。ただし、他の屋根材は10年前後で塗り替えが必要になってくるのに対し、粘土瓦は高耐久で塗り替えメンテナンスが不要なので10年・20年・30年と塗り替えのコストも含めて考えれば、トータルでは粘土瓦が断然に安くなります。
瓦の重みで家屋が地震に耐えられない?
瓦は屋根材の中でも重量があるため耐震面はどうなの?という不安が第一にあると思います。実際、震災などで瓦屋根の家が倒壊している映像を見られたことがあると思いますが、あれはもともと建物自体の躯体が弱かったり古かったりといった理由で揺れに耐えられなかったものなのです。建物自体の瓦の重量とのバランスが合っていれば揺れに耐えられます。
逆に言えば軽い屋根材でも建物の躯体が弱ければ壊れてしまいます。瓦は昔の工法では固定されていませんでした。これは揺れに対して建物が崩れてしまう前に、重い瓦をわざと落として建物を守るようにと考えられた先人の知恵なのです。ですが、昭和56年の大改正以降、瓦は固定されるようになり躯体も揺れに耐えられる構造になっています。

屋根材の中でも瓦は比較的重いですが、だからと言って地震に弱いわけではありません。家の耐震性は屋根の重さだけで決まるのではなく、柱や筋交い、土台、基礎といった家全体で考えます。
粘土瓦の三大産地
皆さんは日本三大瓦をご存じでしょうか?瓦に馴染みがない方にとってはなかなか聞き覚えのない言葉だと思います。
日本建築には欠かせない瓦、古くは寺社仏閣や城郭、貴族の館、その後一般家庭に広く浸透していきました。現代のように物流網が整っていない時代、重量の重い瓦は地産地消として各地で製造されてきました。

その中でも代表的な三大産地をご紹介します!
三州瓦(愛知県三河地方)
現在では国内の瓦生産の7割以上を占める三州瓦。生産地である愛知県西部の旧名「三河」の別名である「三州」から名付けられました。この地域の瓦は焼成温度が高く、優れた耐火性を誇り、冷害に強い特徴があります。発祥は1700年頃と言われています。良質で豊富な粘土に恵まれ、交通の便も良かったことから三州瓦は全国に流通しています。
淡路瓦(兵庫県淡路島)
瓦づくりで最も重要な要素である土、淡路島ではいぶし瓦に適した粒子の細かい独特の「なめ土」が産出されたことから全国有数の瓦の産地となりました。淡路瓦の特徴は、火に強く、雨や寒さに強く、通気性は良好でキメの細かい美しい仕上がりが特徴的です。瓦の中でも歴史は古く、1300年頃から生産されていると言われています。
石州瓦(島根県石見地方)
石見の別名「石州」の名を冠する、石州瓦。日本海に面する島根県西部地域で作られる瓦の総称です。石州瓦の特徴は、雨や寒さ、台風に強く、薄くて軽く、塩害や寒冷地の凍害に強い特徴があります。また、良質の白陶土(はくとうど)と来待石(きまちいし)から採れる釉薬を使うことで作り出される独特の赤褐色の瓦「赤瓦」になります。石州瓦が造り始められたのも淡路瓦と同じ1300年頃からと言われています。
まとめ
日本人にとって馴染みが深く、風流なイメージをもたらせてくれる瓦。瓦屋根の持つ重厚感や耐久性の高さ、コストパフォーマンスの高さなどの魅力、そして耐震面についてお伝えしてきました。近年、スレート屋根やガルバリウム鋼板のような金属屋根の採用が増え、昔ながらの瓦屋根の新築は徐々に減少しつつあります。
しかし、断熱性などの機能的な利点が近年見直されつつあり、形状やカラーも以前に増して種類が増えたことにより選択の幅も広がっています。私たちにとって馴染みのある伝統的な屋根材、これからも大切に守っていきたいですね!

本日はここまで!以上、まきでした!