密着住宅地が多い日本!人命と建物を守る「耐火被覆工事」について
Construnction Industory Media

こんにちは!POPCONEインタビュアーのあすかです!
あっという間にすべてを奪ってしまう恐ろしい火災。今回はそんな火災を防ぐ建物工事についてお伝えします。
目次
現代の火災の恐ろしさ
近日起こった京都アニメーションの放火事件は世界に大きな衝撃を与え、たくさんの命が失われとても悲惨な出来事となりました。
建物に使われる建材の進化などにより、現在の火災にはこの時代ならではの恐ろしさがあります。

まずは、現在の火災の特徴について見ていきましょう
火災発生の件数は減少、しかし死亡者数は増加の理由
近年は建物の耐火性能が上がったことにより火災の発生件数は少なくなりました。発生件数は1980年ごろにピークを迎えそれ以降は減少していますが、対して死亡者数は年々急増しています。
現在の建物に使用されている新建材は発火すると数種類の有毒ガスを発します。よって煙による中毒症状や、少子高齢化の配響で逃げ遅れてしまう年配者が増えていることが死亡者数増加の原因として考えられます。
昔の火災の煙は白色でしたが、現代の火災の写真を見ると真っ黒な煙があがっています。黒い煙はプラスチック(ウレタン・ビニールクロス)が燃えている色です。

現代の住宅は昔とはまったく違う建材を使っているため、それらを踏まえて対策を考えていかなくてはいけません。
現代の火災に対する予防策

では、火災にはどんな予防策が打たれているのでしょうか
避難経路の確保は重要な予防方法です。ポイントには下記のようなものがあります。
- 避難経路や非常口には物を置かない
- 幅を広めにとり視界を確保
- 身体的弱者、お年寄りや子供は逃げやすい場所を寝室にする
- 災報知機や防火路の設置
大事なのは設置するだけでなく実際の使い心地を確かめてみることや、万が一の際に煙に対応できる避難経路や道具の設置場所を考えることです。
消防庁は住宅防火対策の推進について、平成26年版消防白書の中で以下の必要性を訴えています。
2006年の住宅用火災警報器設置義務化から、まもなく10年を迎え、既設住宅用火災報知機の機能劣化が懸念されることから、老朽化した住宅用火災報知機の取替えを推進するとともに、未設置世帯に対する普及促進を図っていく必要がある。
着火物が寝具類や衣類の場合に住宅火災死者が多く発生していることから、防炎品の普及促進を推進していく必要がある。
火災発生時にどうすればよいのか

人が集まると集団心理が働き、正しい行動をとれなくなる恐れがあります。パニックを起こさず冷静に、落ち着いて行動しましょう。
シャッター式防火戸の注意点
シャッター式防火戸は火災が発生すると作動して閉まろうとしますが、無理にくぐろうとすると挟まれて負傷する恐れがあります。防火・煙を遮断するためにも、絶対にくぐってはいけません。
シャッター式の防火戸は必ずその横に避難用の扉があるので、それを探しましょう。落ち着くことは迅速な避難だけでなく、煙を吸わないためにも重要です。
エレベーターの注意点
地震の時と同様、エレベーターは止まったり閉じ込められる可能性があるので使っていけないことになっています。
ただし、給電や配電に火事対策が取られた非常用エレベーターというものも一応存在します。高さ31m以上、もしくは11階建て以上の建築物には消防法で設置が義務付けられており、高層建築での火災時に消防隊員が迅速に突入するためのものです。多くは一般利用者の目につきにくい場所に設置されています。

このようなエレベーターもありますが、避難の際は非常口から避難階段、外階段を使用したほうが良いでしょう。
地下施設の注意点
地下街や地下鉄は人が集まり煙もたまりやすいため、非常時にパニックや将棋倒しになりやすい場所です。従業員・係員の指示に従って冷静に避難することが大事です。
近年、電車の中には最前部・最後部まで行かなくとも連絡をつけられる対話式の車内非常通報装置(SOSボタン)が普及しつつあります。この装置もボタンが押された場合は停止義務がありますが、火災だとわかるとすぐに運転を再開でき、安全な場所まで運行したうえで避難できるのが大きな違いです。
火災から建物を守る耐火被覆工事とは
耐火被覆工事
建物の重要部分となる骨組み(梁・柱)を、断熱性・耐火性に優れた材料で被覆する工事のことです。
万が一建物で火災が発生し、骨組みの耐火性が弱ければ鎮火するまでに建物が倒壊してしまうことも考えられます。耐火被覆工事はこのような建物の倒壊を鎮火するまで防ぐことを目的としています。

工事による被覆も月日が経てば老朽化してしまうので、定期的なメンテナンスも必要です。
過去の耐火被覆工事は身体に悪影響?
防音対策や断熱材などさまざまな用途で使用されていた石綿(アスベスト)は日本の高度成長期に欠かせない存在でした。耐火性にも注目されており、当時の耐火被覆工事などにもよく利用されていました。
日本だけでなく世界でも使用されていましたが、人体に悪影響を及ぼすことが判明し今では使用を禁止したり規制を設けている国が増えてきています。
現在の耐火被覆工事には新素材を使用
石綿は健康の影響を考え、日本でも1975年に使用禁止となりました。その代替として鉱物繊維のロックウールが多く利用されてきました。
しかしロックウールは吹き付けているだけなので、時間とともに表面がポロポロと剥がれ落ちたり、ホコリが舞ったりもします。また、見た目が石綿と似ていることもあり悪いイメージを与えてしまうことも懸念されていました。
現在は見た目だけでなく、耐久性にもすぐれた素材も開発されています。

地球にとっても人体への影響を考えても難しい問題ですね
耐火被覆工事のさまざまな工法
半乾式吹付けロックウール
半乾式吹き付けロックウールはロックウールをブローで空気圧送するとともに、これとは別にセメントをスラリー化してポンプ圧送し、専用ガン先において両者を混合一体化して吹付ける工法です。
この工法は高所圧送が可能で、主に大規模現場でその能力を発揮します。
半乾式吹き付けロックウールの特徴は以下の通りです。
- 軽量かつ断熱性が大きい
- 材質の経年劣化が少ない
- 下地の形状を問わず迅速な現場施工が可能
- 継ぎ目のない仕上がり
湿式吹付けロックウール
湿式吹付けロックウールは無機質結合剤をあらかじめ工場でブレンドし現場では水といっしょにモルタルミキサー等で練り上げます。これを油圧ポンプ等で圧送し、専用ガン先エアにより吹付けます。
湿式吹き付けロックウールの特徴は以下の通りです。
- 施工時の粉塵がほとんどない
- 比重のムラがない
- 施工能率がよい
成型板工法
繊維入りけい酸カルシウムの耐火被覆板を使用しています。表面の硬度が高く、そのまま仕上げ下地用としても使える内装材を兼ねた被覆材です。柱断面を小さくできるなどの利点があるだけでなく、施工上も下地と仕上げの作業が同時に行えるメリットがあります。
成型板工法の特徴は以下の通りです。
- 工場製品なので品質は安定
- 鋸引き、くぎ打ち、切断加工により施工が容易
- ペイント、クロス張りが可能
巻付け工法
高耐熱ロックウール、不織布から成る耐火被覆材を鉄骨に巻き付け、ピンでとめるだけの簡便な工法です。工場製品による安定した品質と発塵がほとんどなく、軽量ですぐれた施工性を特徴としています。
巻付け工法の特徴は以下の通りです。
- 粉塵などの発生がほとんどない
- 軽量でかつ安定した品質
- 養生が不必要で工期の短縮が図れる

耐火被覆工事だけでも数種類の工法があるんですね!
まとめ
火災はどういう状況で起こるかわかりませんが、いかなる時も冷静で落ち着いた行動が必要ですね。
防災対策は当たり前にされていますが、耐火被覆工事をすることによって建物の倒壊を防ぎ鎮火を早くすることができます。地震発生時、冬季の空気が乾燥している時期、事件、タバコ、コンロの消し忘れなど火災はいつ起きてもおかしくありません。必ずしておくべき工事ですね!

耐火被覆工事は私たちの生活に欠かせない工事です。これからおうちを建てる方も是非ご検討ください!
以上、あすかでした!次回もお楽しみに!