約500万人に対してわずか0.2%しかいない構造設計一級建築士とはいったい!?
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こんにちは、POPCONEのあやです!
皆さんは構造設計一級建築士という資格をご存じでしょうか?一級建築士は聞いたことがあるけど構造設計一級建築士は聞き慣れないという人も多いと思います。
それもそのはず、この資格は創設されてまだ10年弱という比較的新しい国家資格なんです。構造設計一級建築士は実はある一定規模以上の建物が成立するためには必須となるエキスパートな資格です!

今回は構造設計一級建築士について詳しくご紹介していきたいと思います!
目次
構造設計一級建築士とは?
平成18年12月の建築士法改正により構造設計一級建築士制度が創設され、一定規模以上の建築物の構造設計については構造設計一級建築士が自ら設計を行うか、もしくは構造設計一級建築士に構造関係規定への適合性の確認を受けることが義務付けられました。この一定規模以上の建築物とは以下のような建物のことです。
- 極めて高度な構造設計が義務付けられている高さ60mを超える建築物
- 高さが13mまたは軒の高さが9mを超える木造建築
- 鉄骨造で4階建て以上の建築物
- 鉄筋コンクリート造で高さが20mを超える建造物
構造設計とは?
構造設計一級建築士という名前から構造設計に特化した建築士ということはわかりますが、構造設計とはいったいどういったものなのでしょうか?
建築設計には大きく分けて意匠設計、構造設計、設備設計の3部門に分かれています。意匠設計はデザインや間取り、構造設計は耐震性などを検証する構造計算、設備設計は空調・音響・水道など環境の計画をそれぞれ行います。

地震大国の日本において構造設計は建築において必須のプロセスであり、その重要度は極めて高いものです!
構造設計一級建築士が出来た背景
構造設計一級建築士の資格が創設されたのは平成20年と比較的新しいですが、創設のきっかけは社会に対する建築構造設計の信用低下に繋がった平成17年の耐震偽造問題です。それまでは一級建築士であれば誰でも構造設計をすることができましたが、この事件がきっかけで構造設計に対する信頼性を求められ、構造設計の高度化にともない建築士法が大きく改正されました。
構造設計一級建築士になるには?

構造設計一級建築士の資格取得が難関と言われる理由はその受験資格にあります。どうすれば資格試験を受けることができるのでしょうか?
構造設計一級建築士の受験資格
構造設計一級建築士になるには原則として一級建築士として5年以上構造設計の業務に従事した後、国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う講習の課程を修了する必要があります。一級建築士の資格を取得するのも難関と言われますが、さらにそこから5年の実務経験が必須ということです。

一級建築士には最短25歳でなれます。そこから5年ということは、構造設計一級建築士の資格を取得するのは最短でも30歳ということです!
構造設計一級建築士の講習・修了考査内容
講習内容(2日間)
- 構造設計総論
- 構造関係法令及び法適合確認
- 構造設計の基礎
- 耐震診断・耐震補強
- 構造設計各論
修了考査(1日、4肢択一式及び記述式)
- 構造関係規定に関する科目「法適合確認」
- 建築物の構造に関する科目「構造設計」
構造設計一級建築士の難易度
一級建築士の上位資格として2008年に創設された構造設計一級建築士ですが、いったいどのくらい難易度が高いのでしょうか?
前段である一級建築士ですが合格率は1割強と低く、難関試験に位置付けられています。その難関試験を合格した一級建築士資格の保有者だけが構造設計一級建築士の試験を受けることができますが、その合格率もそこまで高くありません。一級建築士にとっても難易度が高い試験と言えます。

日頃から大規模建築物の構造設計に携わっている人からすればそこまで難しくない内容ですが、そうでない人にとっては難しい試験です。
構造設計一級建築士の修了率(合格率)
平成27年度
申込区分Ⅰ (両科目受験) |
受講者667名 修了者:182名 修了率:27.3% |
---|---|
申込区分Ⅱ (法適合のみ受験) |
受講者105名 修了者:32名 修了率:30.5% |
申込区分Ⅲ (構造設計のみ受験) |
受講者74名 修了者:25名 修了率:33.8% |
申込区分Ⅳ (構造計算適合性判定資格者) |
修了率:0% |
平成28年度
申込区分Ⅰ (両科目受験) |
受講者627名 修了者:131名 修了率:20.9% |
---|---|
申込区分Ⅱ (法適合のみ受験) |
受講者143名 修了者:45名 修了率:31.5% |
申込区分Ⅲ (構造設計のみ受験) |
受講者58名 修了者:23名 修了率:39.7% |
申込区分Ⅳ (構造計算適合性判定資格者) |
修了率:0% |
平成29年度
申込区分Ⅰ (両科目受験) |
受講者621名 修了者:122名 修了率:19.6% |
---|---|
申込区分Ⅱ (法適合のみ受験) |
受講者87名 修了者:33名 修了率:37.9% |
申込区分Ⅲ (構造設計のみ受験) |
受講者84名 修了者:59名 修了率:70.2% |
申込区分Ⅳ (構造計算適合性判定資格者) |
受講者2名 修了者:2名 修了率:100% |
構造設計一級建築士の勉強方法
構造設計一級建築士試験の対策は過去問を解くことです。過去問はJSCA(日本建築構造技術者協会)で購入することができます。そして、今やっている業務をしっかりとこなす事で試験に合格できる力がついてきます。
前述しましたが日頃から大規模建築物の構造設計に携わっている人からすればそこまで難しくない内容です。

構造設計とは少し異なった業務をしていたり、構造設計の業務をしているけど不安が大きいという人は資格学校に行くことを検討してみてはいかがでしょうか。
資格取得のメリット
構造設計一級建築士の関与が必要な建築物でも、担当する設計事務所のうちのひとりが資格を所持していれば構造設計業務そのものは可能です。ですので実際に構造設計の業務に従事していても構造設計一級建築士の資格を持っていない人も多くいます。しかし、ある程度の規模の設計事務所では資格の有無が社内外における信用度に関わってきたり、昇進や昇給にも関係してきます。
また、構造設計事務所として独立を考えている人は資格取得は必須です。資格がなければ大規模な建築物の構造設計を受注できないため業務の幅を広げるためにも構造設計一級建築士の資格を取得しない理由はありません。

日本の建設業就業者約500万人に対して構造設計一級建築士はわずか0.2%しかおらず、希少価値が高い資格と言えます!
まとめ
平成17年の耐震偽装問題をきっかけに建築士法が大きく改正され、平成20年に一級建築士の上位資格として構造設計の専門に特化した構造設計一級建築士が新設されました。まだ創設されて10年弱の難関資格ということもあり、高度な専門能力を必要とする一定規模以上の建築物の構造設計に関わる業務は非常に少ない人数で行われているのが現状です。
今後、構造設計の技術は高度化しつつあることも考えると、ますます需要は高まっていくと考えられます。

構造設計の業務に従事する人はもちろん、構造設計一級建築士に興味を持たれた方はぜひ資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
本日はここまで!以上、あやでした!